あんのよしなしごと

三谷幸喜さんの作品の感想、本の感想、映像作品や音楽の感想などをつづったブログです。

束芋 断面の世代(国立国際美術館)

国立国際美術館の「束芋 断面の世代」展に行ってきました。

最初の展示は「団地層」。

・・・

学芸員さんから「暗いのでお気をつけて」と指し示された方向に踏み出すと、お化け屋敷か?と思うほど、真っ暗で、何も見えないトンネル。

おそるおそる壁を伝いながら進むと、天井に照らされた映像。

「イスに座って見てください」とそこにいた学芸員さんから小声で言われても、真っ暗でイスなんか見えない。

戸惑っていると学芸員さんが小さな懐中電灯で足元を照らしてくれて、ビーズクッションが並んでいることに気がついた。

そっと腰を下ろし、頭をクッションに預けて、天井を見る。
周りには、同じような大勢で天井を見上げる人々。

映像は、団地の断面。それぞれの部屋に置かれている家具が、次々と落下していき、また新しい部屋が現れては同じように家具が現れ、落下していく。

(これは、何・・・?)

見続けていると、気がついた。「個性」の表現かしら、これは。

団地の部屋という規格化されたスペースの中に現れる家具は、住む人の個性を露にする。規格化されたところに押し込まれているからこそ際立たせたいと思う、自分らしさ、みたいなもの?

・・・

暗闇の中で徐々に目が慣れてくると、私と作品、という関係だけでなく、一緒に寝転がって天井を見ている人々の存在も感じるので、その場にいる皆と私と作品、という一体感のようなものも感じました。
映像インスタレーション、という形態にここまで没入できたのは初めての体験でした。

この展覧会では、この作品のほか、全6点が展示されています。
1点が新聞小説の挿絵原画で、5点が映像インスタレーション

私が特に印象に残ったのは上記の「団地層」と、もうひとつ、「BLOW」という作品でした。

以下、パンフレットにある作品解説の引用です。

個の内側から外に向けて発散されるものを表現したい。
血肉のような物質的なものも、愛情や憎しみのような不可視なものも、個という袋に閉じ込められたものが外に放出されるとき、閉じ込められていたときとは違った形に変化し、成長していく。
空気や光に触れ、水が与えられ、周囲との関係の中で刻々と変化していく植物に例え、美しさだけでなく、艶かしさや毒々しさも表現する作品となることを期待している。

女のコアな部分を目の前に突きつけられた気がしました。
「そんなすました顔してるけど、あんたもこうでしょ?」と言われている気がして、なんともいえない気持ちに。
おどろおどろしくて、毒々しいアニメーションに、妙にリアリティを感じました。

展覧会のサイトは下記。
http://www.nmao.go.jp/japanese/b2_exhi_beginning_tabaimo.html

展示作品の紹介は下記(横浜美術館国立国際美術館では展示方法が変わったようです)
http://www.yaf.or.jp/yma/jiu/2009/exhibition/tabaimo/japanese/works.html