あんのよしなしごと

三谷幸喜さんの作品の感想、本の感想、映像作品や音楽の感想などをつづったブログです。

【芥川賞】庄司 薫 「赤頭巾ちゃん気をつけて」

 

赤頭巾ちゃん気をつけて (新潮文庫)

赤頭巾ちゃん気をつけて (新潮文庫)

 

 

第61回(1969年) 芥川賞受賞作品 ★★★

これはやられました!

東大紛争の時代、目指していた東大の入試が中止になってしまった18歳の少年の独白。

「優等生」的な行動を取ってしまう自分への肯定感と否定感の揺れ動き、世の中に対する冷めた目、そういう世の中との距離を感じる焦燥感、正統と異端、自信と挫折。

そして、そこから立ち直るきっかけ。

かつて・・・10代後半から20代初め頃・・・の私も同じ気持ちの遷移をなぞった気がします。

私も、冷ややかに見ていた「阿波踊り」を、いつか肯定的に見るようになりました。
そのきっかけは色々な人との直接的な交流や、大好きなミュージシャンの影響だったり。

そして実は今でも、同じループにはまることがあります。

こういう葛藤は若者の特権のように思われているように思うので、今でも時々この葛藤にはまる私は、まだまだ未熟な人間なのだろうと思うけれど、現状に悟りきって諦め顔するオトナにはなりたくないので、ま、いいか。

そして、描かれていた東京都立日比谷高校の気風は、私の高校時代を思い出したりもして。

1969年の作品ですが、その後1995年に著者自身による「四半世紀たってのあとがき」も面白いです。