第28回(1952年)芥川賞受賞作品 ★★☆
体は不自由だが頭脳明晰な青年。彼の幼い頃の記憶に残る、あるキーワードの謎が偶然にも森鴎外の小説から判明したことをきっかけに、やはり謎に包まれていた森鴎外の小倉在住時代の事跡を明らかにすることを生きがいにする。
自分ではどうすることもできないコンプレックスを抱え、そのコンプレックスを自分の頭脳により克服しようとする。その執念は、自らのコンプレックスゆえに、とてつもなく強い。
本作では、主人公の青年が自らの「生きがい」として見つけた森鴎外の小倉時代の探求調査への執念が印象に残った。
また、青年が森鴎外の足跡を尋ね、少しずつ鴎外の小倉での生活ぶりが判明していく過程は推理小説を読むようでもあり、やはり松本清張だと思った。