作・演出 三谷幸喜
出演 中井貴一 寺脇康文 相島一之 堀内敬子 生瀬勝久
2007.5.11 シアターBRAVA! にて観劇
【あらすじ】
ゴッホ、ゴーギャン、スーラ、シュフネッケルという4人の画家が共同で借りているアトリエに、モデルとしてやってきた女性、ルイーズ。芸術に関してまったくの素人であるルイーズの目に映る、4人の画家たちの友情、絆とは・・・
以下、ネタばれを含むと思われる、感想です。
三谷芝居としては「エキストラ」に続き、ある意味悲劇といってもよいのではないでしょうか。
1幕では大いに笑わせていただき、2幕ラストでは切なさにうるっときて、余韻に浸りながらのスタンディングオベーション。
2幕開始での三谷さんのアコーディオン(バンドネオンでしょうか?)のサプライズ演奏は楽しかったです。
スーラの、才能があるからこそ、世に埋もれているけれども自分よりも優れた才能に嫉妬し、潰してしまおうとする自分を責める悲劇(中井さん、神経質そうな("点々"を黙々と描いてそうな)キャラクターがぴったり。ゴッホの絵を潰してしまうくだり、ぞくぞくしました)
シュフネッケルの、才能がないからこそ、自分に才能がないことに気づくことができない悲劇(相島さんのどこまでも人のよい優しいオーラが、かえって涙を誘いました)
この2人の、対極的な悲劇の間にある、
ゴーギャンの、(諦めにも似た)ゴッホを認め羨む気持ちがある一方、自身のプライドを保つため「絵」以外のすべてでゴッホに勝とうとする悲劇(寺脇さん、女好きっぽいところ、ぴったりでした。)
ゴッホの、才能があるのに世に認められず、ともすれば才能があるがゆえに世に出させてもらえないという悲劇(生瀬さん、心に鬱屈したものを抱えた天才ぶり、さすがでした。フランス人には・・・見えなかったかも^^;;)
そして無邪気なルイーズ(堀内敬子さん)が、温かく4人を包んでいく。
無名だからこそ一緒にがんばっていこうという気持ちを共有し、でもそれは「集団」としてのし上がっていくことが目的ではなく、あくまで「自分」がのし上がっていくために集まった個人の集まりであり、でも一緒にがんばっていくという中で戦友としての友情が生まれ、離れ離れになっても自分の原点として意識する場所であり、そんな場所があることの幸せってあるのではと思いました。
そしてそういう場所は自然にあるものではなく、誰かが作るもの。
シュフネッケルは、画家としての才能はなかったけれどもそういう場所を作ったという功績がある。三谷さんのシュフネッケルに対する愛情のようなものを感じました。(そして、そういう重要な役を相島さんが演じたことが、嬉しかったです)
もしかしたら、三谷さんは、きっといろいろな俳優さんたちの「コンフィダント」なのかもしれませんね。東京サンシャインボーイズの俳優さんたちを世に送り出したし、そのほかの俳優さんたちも、新しい魅力を世に送り出している。
三谷さんの野心ある脚本家としての側面と、その野心を現実のものにするための「コンフィダント」としての側面の両輪が、絶妙なバランスをとっていることにより、三谷作品を支えているように思いました。