第22回(1949年)芥川賞受賞作品 ★★
戦後の復興の中、新鋭新聞社が社運を賭けた事業に奔走する男。
心の隙間を何かで埋めずにはいられないという情熱が、彼を仕事に没頭させる。けれども決してその隙間は埋まらない。。。
そして彼に近づく、「儲ける」ことに実にしたたかな男たち。
生きることに一生懸命な人間たちの、熱いドラマだった。
もしかして、芥川賞には、その時代を反映していることが必要なのかもしれないと思いました。ということは、今の作品に描かれている「時代」がたとえ今を生きる私たちには当たり前に思えてしまっても、もっと時間が経って、社会のありようも変わった時代の人にとっては新鮮なものになるのでしょう。
・・・もしかして、芸術と、消費されていくエンターテインメントの違うところは、まさにそういうところ?
芸術は、時代を超えた人(小説なら読者)をも想定できる。もちろん、消費されていくエンターテインメントの中から、時代を超えて残っていくものもあるだろうけれど、芸術は、はじめから「50年後の人々」に対してものづくりができるのかもしれない。
2000年代の芥川賞作品と、1950年頃の芥川賞作品の両方を読んでみて、そんなことを思いました。