第32回(1954年)芥川賞受賞作品。 ★★
つつましくも幸せな小さな家庭が、夫の失業(夫が起こした不祥事が原因)をきっかけに崩れていく。20年もの長い間、妻として夫として一緒に暮らしていたのに、妻は夫の苦悩を知ろうとしなかったし、夫はその苦悩を妻と共有しようとはしなかった。つつましくも幸せな家庭を維持するために。
こんな状況が悲劇的でなく、一見幸せそのものに見える情景として描かれているからこそ、その奥にある悲しさが心に迫ります。
闇を描くために、光を表現しているといいましょうか。読んだ後、思わず背筋が寒くなりました。