第116回(1996年)芥川賞受賞作品 ★☆☆
廃船が近い青函連絡船の乗務員を辞め、刑務所の看守となった「私」。勤務する刑務所に、少年時代、卑劣に「私」をいじめ抜いた同級生、花井が受刑者となって現れた。。。
刑務所における船舶訓練という、海を舞台にした荒々しさ、壮大さに対比された、花井にまつわる「私」の心の動きの繊細さが、たくましい男の心の傷の大きさを浮き彫りにしています。
「私」も花井も、深い海の底のような闇を抱えていて、ひとすじの光を求めているけれど、それを手に入れようとした瞬間、また闇に引き戻されてしまう。
海底を歩かされているような重たい小説でしたが、文章はどこかどっしりとした温かみもあり、すっと読めました。