あんのよしなしごと

三谷幸喜さんの作品の感想、本の感想、映像作品や音楽の感想などをつづったブログです。

「チルドレン」 伊坂幸太郎

 

チルドレン (講談社文庫)

チルドレン (講談社文庫)

 

 

5つの短編集でもあり、1つの長編でもありました。それぞれの物語は、ミステリー風あり、子どもを更生させようと奮闘する家裁調査官の物語あり、親子・夫婦の確執の物語あり。深刻ではなく、ちょっとにんまりしてしまうような、でも少しチクっとくるような、ハートウォーミングでもない、でもハッピーになれる、ちょっと不思議な読後感でした。

1つずつ読み進めていくうちに、1人の人物が全ての話に共通して登場していることがわかり、その人物である「陣内」の独特で魅力的なキャラクターが、それぞれの短編でとても良い役割を果たしています。と同時に、型にはまらないけどすごいことをする「陣内」という人物にどんどん魅力を感じるようになります。

5つの短編の時間軸は順番ではなく、10年後になったり10年前になったりといった感じで行ったり来たりします。
陣内という一人の人物がどうやって出来上がっていったのかを、「こういう人物になったのには、実はこんなとがあった」と時間を遡って重要なエピソードだけを描くことにより、人物像が凝縮されて浮かび上がってくるのが面白いです。

ちょっとこれまでに出会ったことがない種類の作品で面白かったです。