あんのよしなしごと

三谷幸喜さんの作品の感想、本の感想、映像作品や音楽の感想などをつづったブログです。

『はなとゆめ』 冲方 丁

某少女漫画雑誌!?と見まごうタイトルですが、清少納言が内裏にあがり、かの有名な枕草子を書くに至った日々を描いた物語。

Kindle版では挿絵あり版となし版がありましたが、挿絵が効いているので挿絵あり版で正解でした。

清少納言が仕えた中宮定子がたいへん魅力的で、中宮定子の気品、賢さ、美しさにどんどん惹かれていく清少納言の気持ちに同調しながら読みました。

そして清少納言の、中宮定子に仕える幸せ、認められるように努力する気持ち、認められた喜びが素直に伝わり、紫式部からは教養をひけらかしていると揶揄されるようなことも、ひとえに中宮の華に貢献するためだったと思えます。

藤原道長によって苦境に追いやられた中宮定子。それでもなお、決して落ちぶれた様を見せない心意気。

そして道長の陰謀によって内裏を離れなければならなくなった清少納言が、中宮を楽しませるために書いた、枕草子。そう考えると、枕草子を読む文脈もまた変わってくるように思います。

宮中で交わされる教養ある機転の効いたやりとりも読んで楽しく、作品全体を包む、穏やかな華のある空気が心地よかったです。

枕草子をまた読みたくなりました。