脚本と監督:三谷幸喜
観終わった直後に浮かんだ言葉は、爽快感。ハッピー。優しい世界。
個人的には、三谷映画の中では一番好きかも。
以下、ややネタバレを含むと思われる感想です。
誠実に、本音で話し合えばうまくいくなんて、現実ではありえないかもしれない。
世の中を良くしたいなんて理想に燃えたところで現実の壁は高くて厚くて、大抵はその現実に屈して長いものに巻かれ、わかったような顔をしてそれが「大人になることだ」みたいなことを言ったりして。もうそんな「大人」の自分自身でいることから抜け出せなくて。
でもこの映画の中では、私利私欲にまみれた高圧的で最悪な総理大臣が、記憶喪失になり、そのせいで優しく正義感があり誠実な人物になったことで次々と苦境を乗り越えていき、それを目の当たりにした周りの人物も次々に、自分なりの夢があった初心に立ち返っていく。
あたかもその様は、オセロゲームで四方八方が黒で埋め尽くされていたところに白の駒を置いたら、周りがどんどん白にひっくり返るような爽快感で。
ファンタジーなんだろうけど、こんなことがあったら素敵だなと思うし、これをファンタジーと決めつけて大人ぶるのはやめたいとも思いました。
登場人物それぞれに光が当たる三谷脚本は健在。
三谷映画はともするとオールスターキャストでお祭り的になりますが、今作は笑いもたくさんありつつも、どこか穏やかで優しい空気にあふれていました。
中井貴一さんの、記憶喪失直後のオドオドしたところから自信に溢れた堂々たる姿への変化が素晴らしい。
佐藤浩市さんの、飄々とした中にある熱、重くなりすぎない渋さ、本当にカッコいいです。
ディーン・フジオカさんは、こういうクールな役が本当にお似合いです。
小池栄子さんの安心感。僅かな登場シーンなのに印象に残る田中圭さん(カッコ可愛い)。
挙げればキリがありません。
あー、観てよかった。