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三谷幸喜作品と本の虫★あんのよしなしごと

大河ドラマ「真田丸」をはじめ、三谷幸喜さんの作品の感想、芥川賞受賞作品を中心とした本の感想、音楽やハンドメイド関連などをつづったブログです。

【読書感想】『本屋さんのダイアナ』柚木麻子

書籍・雑誌

 

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

本屋さんのダイアナ (新潮文庫)

 

 

裕福な家庭の一人娘の少女と、母子家庭の少女の共通点は「本が好き」なこと。

小学生の二人が出会い社会人になるまでの成長物語。

自分のコンプレックスに悩み、お互いの能力や環境を羨み、親との関係に悩み、思い描いていた理想の人生からの挫折に悩む。

それらを親のせいにしたり環境のせいにして自分を守っているうちは、その悩みや苦しみからは逃れられない。

けれどもある時、自分や親、関わっている人を俯瞰して見ることができるようになった時、その悩みも客観的に見ることができ、昇華できる。

二人の少女がそうやって自立していく過程をじっくり味わえる作品です。

 

【読書感想】『一汁一菜でよいという提案』土井善晴

書籍・雑誌

 

一汁一菜でよいという提案

一汁一菜でよいという提案

 

 

毎日の献立を考えるのが面倒、仕事をして疲れて帰ってきてから食事の支度をするのがしんどい・・・

でも毎日「ご飯と具だくさんの味噌汁」だけでよいとしたら?

一汁一菜とは、ご飯を中心とした汁と菜(おかず)。その原点を「ご飯、味噌汁、漬物」とする食事の型です。
ご飯は日本人の主食です。汁は、伝統的な日本の発酵食品の味噌を溶いた味噌汁。その具には、身近な野菜や油揚げ、豆腐などをたくさん入れられます。 

 

ハレの料理に対するケの料理。それが日常の食事。

日常の食事はとびきりおいしいものである必要もない。おいしくないときがあっていい。

ご飯と具だくさんの味噌汁。
これだけで毎日に必要な栄養は充分摂ることができます。基本となる食事のスタイルを持てば、暮らしに秩序が生まれます。

毎日作る基本は、具だくさんの味噌汁だけ。しかも、ありあわせの野菜やらなにやらを入れればよい。素材から味が出るので、出汁さえも必要ない。

毎日の食事を作るということの心のハードルが一気に下がり、これならできそう、という気になります。

そして一汁一菜の背景である和食文化や、一汁一菜でも味わえる季節の楽しみ、器の楽しみなど、読み進めていくうちに肩の力が抜け、気持ちが整い、穏やかになりました。

 

一汁一菜、はじめたいと思います。

 

【感想】【芥川賞】村田沙耶香 『コンビニ人間』

書籍・雑誌 芥川賞

第155回芥川賞受賞作品。★★

 

コンビニ人間

コンビニ人間

 

 

 

以下、ネタバレありますのでご注意。

 

読んでいくうちに、自分の価値観を問われているように感じました。

主人公の恵子は、物事の善悪の判断基準がなく、感情も起きない。
子どもの頃、公園で死んでいる小鳥を見て他の子どもたちが可哀想と泣いている横で「この小鳥を焼き鳥にして食べよう」という子ども。父親が焼き鳥が好きだから。
また、取っ組み合いの喧嘩をしている男子生徒たちを止めるために、彼らをスコップで殴りつけるような子ども。「誰か止めて」とその場にいた子たちが叫んでいたから。
なぜ自分の取った行動が良くないのか、理解できない。

そのため恵子は大人になるにつれて周りにいる人の行動・言動を真似るようになります。自分の頭で考え判断するのではなく、ただ真似る。
「普通の人」のようにふるまうことででようやく社会の中で生きていけるようになる。

「郷に入っては郷に従え」という言葉があるように、集団の中で社会生活を送るためにはその集団の価値観やルールに従わざるを得ないという一面は確かにあります。
その集団を社会全体にまで広げた時、集団の価値観やルールは「普通」「常識」と呼ばれるのかも知れません。

この社会における「普通」とは何か?が全くわからない恵子の目を通すことによって、あなたが考える普通や常識って普遍的なものなのか?正義なのか?と問いかけてきます。

この作品には3種類の人が出てきます。

まずは、恵子。自分の生来の気質に加え、36歳で独身でコンビニバイト生活(ただし、コンビニ店員としては非常に有能)である自分が普通ではないと自覚し、自分ではそれを気にしてはいないが、社会生活を送るために必要なので「自分が普通ではない」ことを隠す努力をしている。

そして、白羽さん。30代半ばの無職独身男性。自分が「普通の男性の生き方=仕事をし、結婚して家庭を持つ」ことをしていないことを卑屈に捉え、行動も卑屈です。

そして最後に、恵子の周りの人々。「普通」からはずれている人を(無意識下でも)遠ざけようとし、「普通でない」白羽さん(卑屈な行動、ルール無視が多いこともあり)を毛嫌いし、恵子のことを「36にもなって独身でバイト生活なんておかしい」と心配したり、理解しがたいと思っている人々。

読んでいても、恵子の子どもの頃の行動は理解しがたい一方で、36歳で独身でバイト生活だからって異常者扱いしなくてもいいんじゃないかと思うそのことに、自分自身の「普通かどうかを判断する物差し」を自覚させられました。

また、恵子や白羽さん、周りの人々の気質や考え方そのものを取っ払って単純化すれば、マジョリティの人々、マジョリティを基準に設計された社会をマイノリティである人々の目から見た物語でもあります。

マジョリティである「普通」側が、その「普通さ」を正義としてマイノリティに押し付ける厚かましさを恵子の周囲の人々から感じました。

色んな視点で見れば、自分は何かではマジョリティ側であり、何かではマイノリティ側であったりするもの。

結局は多様性を認めるということになるのでしょうけれど、それは決して建前ではなくて自分にとってのリスクヘッジなんだろうなと思います。