作・演出:三谷幸喜
出演:市村正親 浅野和之 戸田恵子
2002.4.13 シアター・ドラマシティ にて観劇
(観劇以来初めてDVDを観て、観劇時よりずっと心に響いたので改めて感想を書きます)
【あらすじ】
数年前に亡くなった歌手、笹目にしき(戸田恵子)の追悼曲を作るため、かつて彼女に歌を作っていた作詞家・杉田吾郎(市村正親)と作曲家・前野仁(浅野和之)が久々に再会する。
二人は曲作りをはじめるが、それぞれお互いが知らないにしきとの過去を語りだす。
一人の女性と、その女性を愛する、正反対の性格の男性二人。三人の楽しくもほろ苦い日々とは・・・。
(その追悼曲となる劇中歌の作曲は井上陽水氏が担当)
以下、ネタバレありの感想です。
「人間のプライド」について、いろいろ考えさせられました。
自分の小さなプライドにすがる人間の弱さと、傷つきながらも生きていく人間の強さと。
世渡り上手でプライドを傷つけられても這い上がり、作曲家として成功している吾郎と、自分のプライドを守るために周囲を遠ざけていったため、仕事もなく落ちぶれていった仁。
吾郎は仁を助けようとしますが、卑屈になってしまった仁は、それを拒否します。
けれども吾郎も、決して傷ついていないわけではないし、這い上がるために嫌な思いを沢山してきた。
二人がそれぞれにしきとの思い出を語っていくうちに、お互いが知らなかった事実を知り、お互いの気持ちを知り、お互いの辛さを知り、そしてにしきのことを想い、二人はまた対等な二人に戻ります。
にしきをめぐる二人の思い出話と回想だけなのに、対等⇒勝者と敗者⇒再び対等、という二人のドラマティックな関係の変化が、手に取るようにわかります。この構成力といいましょうか、筆力といいましょうか、三谷幸喜という人は、凄いの一言です。
それにしても、なんで人間って、素直になりきれないんでしょうね。本当はそばにいてほしいのに突き放したり、本当は一緒にいたいのに、わざと離れて相手の反応をみたり。
でも、だからこそ、面白いんでしょうね、人間って。