あんのよしなしごと

三谷幸喜さんの作品の感想、本の感想、映像作品や音楽の感想などをつづったブログです。

【芥川賞】「熊の敷石」 堀江敏幸

 

熊の敷石 (講談社文庫)

熊の敷石 (講談社文庫)

 

 

第124回芥川賞受賞作品。 ★★★

「熊の敷石」とはラ・フォンテーヌの「寓話」に由来し「いらぬお節介」といった意味だとか。
読み終わり、人間の悲しみについて考えました。
人々はそれぞれ形の違う悲しさを背負っていますが、普段は意識しないようにしています。
しかし他人とのかかわりの中で、その悲しみを意識せざるを得ない時があります。
作中でそれを意識させてしまった側になった主人公は、自分自身が「熊の敷石」ではなかったかと悩みますが、たとえそうであったとしても、「熊に敷石を投げられた園芸好きの老人」は、「熊」を責めたりはしないでしょう。老人自ら、熊が自分のそばにいることを許したのだから。
自分の悲しみを解放するためには、自分に敷石をなげるくらい無神経な人にぶつかってみた方がいいのかもしれない。そんなことを思いました。