三谷幸喜作品と本の虫★あんのよしなしごと

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舞台「熱帯樹」 感想

舞台『熱帯樹』を世田谷パブリックシアターのシアタートラムで観てきました。

作:三島由紀夫
演出:小川絵梨子
出演:林遣都 岡本玲 栗田桃子 鶴見辰吾 中嶋朋子

【あらすじ】
1959年秋の日の午後から深夜にかけて。資産家の恵三郎は、己の財産を守ることにしか関心がなく、妻・律子を自分の人形のように支配している。律子は夫の前では従順だが、実は莫大な財産を狙い、息子の勇に夫を殺させることを企んでいた。その計画を知った娘の郁子は、愛する兄に母を殺させようとするが……。
世田谷パブリックシアター 『熱帯樹』サイトより引用)

ネタバレを一部含んでいると思いますのでご注意を。

 

三島由紀夫作品は、私は学生時代に小説『潮騒』『金閣寺』『仮面の告白』を読んだ程度です。舞台は初めて。
そんな数少なく遠い記憶の中でも残る三島作品の印象は、美しい言葉で彩られた文章、狂気と表裏一体の性愛、抑圧された人間の欲望に見出される「美」。

この『熱帯樹』も、詩的な美しい台詞にあふれ、支配的な夫と夫の言いなりの妻、母と娘、母と息子、兄と妹の間の歪んだ愛情が交錯。
ともすると戯曲だけで完成された文学として成立してしまいそうで、これを人間が演じ、舞台芸術とするのはとても難しいと想像します。

ところが小川絵梨子さんの手にかかった今回の舞台は、「三島作品らしさ」のようなものを押し出すのではなく、あえて抑えて三島世界をぐっと現代に引き寄せ、リアリティを感じさせるつくりをしていたように思います。

三島作品の「美しい台詞が描く世界観」をたっぷり味わいたい方には、少し物足りないものがあったかもしれませんが、現代に引き寄せたことで三島作品をおとぎ話的に見るのではなく、現代とも共通する普遍的な男と女、親と子の愛の物語になっていたのかもしれません。。

以下、僭越かつ恐縮ではありますが、俳優さんたちについて個人的な感想を。

岡本玲さんの印象がとても強く残りました。世界観にあっているというか、若い女性が持つ狂気を良い意味で主張していて。台詞回しが流麗な言葉とマッチして心地よかったです。

鶴見辰吾さんはしっかりとした存在感で舞台を支え、全体を引き締めているように思います。

林遣都さんは、父に怯え、母と妹に振り回されて苦悩し、愛に飢えている姿に「青年の美」のようなものを感じました(もっと苦悩する姿が見たくなるほどに)。

中嶋朋子さんは、夫の言いなりになる抑圧された感情と、子どもたちとの関係の痛々しい感じ、妻や母になりたくてもなれない苦しみが伝わって来ました。

栗田桃子さんは、一見家庭内の常識人と思いきや多分彼女が一番狂気をはらんでいたように思います。寒気がするほど。淡々とした演技でそれを表現するのはすごいと思いました。

また、シンプルな衝立なのに様々な場面転換に活きる舞台美術が面白かったです。

あと世田谷パブリックシアター、いいですね。劇場の雰囲気も好きですし、市民を巻き込んだ文化芸術活動を発信されているところも素敵です。

世田谷区は他に世田谷美術館や世田谷文学館など、公共の文化芸術部門が充実していて素晴らしいですね。

 

▼関連? 本舞台とはまた別の魅力たっぷりな林遣都さん出演ドラマ

anno-yoshinashi.hatenablog.jp