第98回(1987年)芥川賞受賞作品。 ★★
定職に就かず、染色工場のアルバイトをして生活する「ぼく」。同じ工場で、やはりアルバイトとして働く同僚の佐々井と出会い、その不思議な雰囲気に興味を持ち始める。
現実を真正面から見つめるにはまだ幼い、大人のほんの少し手前の青年二人のある数ヶ月間。
浮遊感と呼べばよいのだろうか。主人公の「ぼく」と佐々井に共通するのは宇宙や星への思い。星を眺め宇宙を感じ、その中に浮かぶ自分を相対化して意識する。
二人は現実と宇宙への意識の中間を漂い、二人はそれを自覚している。
冒頭、唐突な宇宙の話に最初は戸惑ったが、気がつくと「ぼく」と佐々井の二人の世界に溶け込み、一緒にその浮遊感を味わっていた。
そして、ほんのり甘酸っぱさが残る。