第154回芥川賞受賞作。★★☆
以下、ネタバレ注意です。
長年連れ添った夫婦は顔が似てくるというのは聞いたことがある。
私はそれを微笑ましいものと好意的に考えてきた。
けれどもそれは妻が夫が相手と同化していってしまい、「自分」というものをなくしてしまったとも言えないか?
知らず知らずのうちにもともとの自分の顔を失い、自分の好みを失い、自分の人格を失うとしたら、その結婚は良かったといえるのだろうか・・・?
本作は「異類婚姻譚」の説話の姿を借りながら、結婚って何なんだと問いかけてくる。
全くの他人同士が一緒になるということは「異類」同士が一緒になるともいえる。つまり、結婚とはすべからく「異類婚姻」ではないか?そんな二人が「同類」になっていくことは、果たして良いことなのか?お互いが異なる存在であることを尊重しながら一緒に生活をしていくことが大事なのではないか?『鶴の恩返し』のように、「異類」であることがバレたら一緒にいられないのか?
実は相手は人間じゃありませんでした、という「異類婚姻譚」と見せつつも、人間同士の結婚だって「異類婚姻譚」ですよね、という作者の課題提起のように思いました。
徐々に同化していく主人公夫婦に多少の薄気味悪さを感じながらもぐいぐい読まされました。
そして、同化癖のある人とは一緒にならないでおこうと思いました。
また、相手を同化させてもいけないとも思いました。
いわゆる「3メートルの距離」って大事ですね。