自由奔放な母と、娘の物語
自分の元からいなくなってしまった愛する彼を待ち続け、彼との間にできた娘を連れて各地を転々とする母・葉子。
そんな母に振り回され、苦労して新しい土地に馴染んだと思ったらすぐに引っ越し続けることを不満に思う娘・草子。
この物語を母・葉子目線で読むか、娘・草子目線で読むかで印象は大きく変わるでしょう。
私は自然に娘・草子目線で読んでおり、娘のことを全く考えずに自分本位で引っ越しを強いる母・葉子に強い反発心を抱きました。
娘は母親の所有物ではないし、母親の人生と娘の人生は別のもの。
一方で母・葉子。
「戻ってくる」と言い残した彼なのだから、彼女もその場所にとどまっていたほうが、万が一戻ってきたときに会えると思うのだけれど、彼女は居場所を転々とする。
あたかも、自ら彼との再会を避けているかのように。
葉子は、もはや彼を待つことだけが人生の目的になっている。
安定した生活をすると彼を待つ気持ちが弱まるかもしれない恐怖、元いた場所に戻ると、彼と再会できるかもしれないが、その彼は昔の彼ではないかもしれないという恐怖。
「彼を待つ」ことを人生の目的として掲げることは、きっとこんな恐怖と闘わないといけないのかなと思いました。