あんのよしなしごと

三谷幸喜さんの作品の感想、本の感想、映像作品や音楽の感想などをつづったブログです。

【感想】「ギャラクシー街道」

【あらすじ】

西暦2265年、宇宙の居住空間「うず潮」と地球を結ぶルート、通称「ギャラクシー街道」の通り道にあるハンバーガーショップ。この店には、地球人だけでなく、様々な宇宙人が立ち寄り、それぞれの時間を過ごしている・・・

”SF好き”の方は、思わずニヤリとされるのではないでしょうか?

「1960年代に作ったSF映画」といった体裁で手作り感満載、どこかノスタルジーを感じます。

また、2001年宇宙の旅、スタートレック、猿の惑星、(60年代じゃないけど)E.T.?

これらの作品を彷彿とさせる要素がありました(私はSF映画に詳しくないのでこれくらいしかわかりませんでしたが、他にもありそうです)。

三谷さんは今回「SF」映画を作るにあたり、過去の様々なSF名作への愛をこめて、これら作品の象徴的なエッセンスを集め、配置していくところから始めたのかなと勝手に想像します。

ストーリーは、ハンバーガーショップに集まる宇宙人たちそれぞれの、とある1日の出来事。

ドラマティックなことはほとんどなく、誰かが成長するとか、感動的な出来事があるとか、課題が解決するとか、そういうことはありません。

大きな山も谷もないかもしれないけれど、道端に咲く雑草の花を見つけてちょっと微笑むような等身大の人生。これはこれでいいよね、と言われているような、ほっこりした気分になりました。

また、関わりのないはずの他人同士が、同じハンバーガーショップに居合わせたことで、ハプニングに力を合わせるシーン。これは、三谷作品の特徴の一つですね。

もともと「感動はない、笑いだけ」という触れ込みでしたので、感動はありませんが、笑いの内容は、かなりシュールです。

三谷さんの「SF名作」へのオマージュに、”平凡で等身大な人々”への愛を織り込んだ作品だなと思いました。

これまでの三谷映画を観ている方へ、エンドロールもきっちり見ると、某俳優さんの役名でニヤリとすると思います。

 

ドラマ「オリエント急行殺人事件」 感想

原作 アガサ・クリスティー
脚本 三谷幸喜

2015年1月11日、12日にフジテレビで放送された2夜連続のドラマです。

下関から東京に向かう特急「東洋」の車内で起きた殺人事件を、ちょうど乗り合わせた名探偵・勝呂が推理によって解決する。

原作を読んだことがなかったので、このドラマを見てから、原作を読みました。

第一夜は、探偵・勝呂の視点。特急に乗り込む直前から、犯人を特定し、犯人に認めさせるところまで。

第二夜は、犯人の視点。なぜ犯人が今回の事件を起こすに至ったか、そして様々な想定外の出来事が起こる中、実際にどのように犯行に及んだのか。

後で原作を読んでわかったのですが、第一夜は細かなところまで原作そのままでした。
舞台を昭和初期の日本に移しているのですが、人物造形や小道具的なものまで全て忠実に再現していたように思います。
人物名も、原作と対応付けられてもじっていましたね。

第一夜に三谷さんの創作部分はなかったといってもいいでしょう。

「三谷さんらしさ」は、第二夜にこそありました。

どうやって、勝呂視点での「第一夜で起こったこと」に結びつくのか、どうやってこのメンバーが集まったのかが興味をひいて飽きさせません。
原作にはその過程の描写はないので、三谷さんのオリジナルなのだと思います。

犯人の側の視点で描くのは、三谷さん脚本で一世を風靡したドラマ「古畑任三郎」の手法ですね。

仲間が一人、また一人と集まっていく様は「忠臣蔵」のようでした。
物語の舞台を、まだ幕末・明治の文化の名残を残すであろう昭和初期の日本に置き換えたことで、登場人物たちが「リアルな敵討ち」という発想に想いを至らせる説得力が増したのかもしれません。

また、野村萬斎さん演じる勝呂を過剰に芝居がかったキャラクターにすることで、見ている側にお芝居としての「忠臣蔵」のような、ファンタジー感を強調していたのかもしれないと思いました。

【原作本】

舞台出身ならでは!三谷幸喜監督の映画おすすめ3作品

三谷映画には、長回しや1シーン1カットなど、舞台脚本家ならではの手法が多く取り入れられているように思います。また近作はセットがとても凝っていて、リアリティとフィクションの絶妙な取り合わせがステキです。

ザ・マジックアワー

 

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【あらすじ】
ギャングのボス(西田敏行)の愛人に手を出してしまった男・備後(妻夫木聡)。
ボスに命を見逃してもらうために"伝説の殺し屋・デラ富樫"をつれてこなければならなかったが、見つからない。
そこで備後は売れない俳優・村田(佐藤浩市)を「デラ富樫」という役の主演映画の撮影だといって騙して連れてきて、なんとか乗り切ろうとするが。。。

三谷幸喜監督作品4作目。

「現実として存在しているボス」と、「映画の撮影という虚構の姿として存在している村田」のやりとりが面白い。ヨーロッパ風の街のセットが、現実と虚構の両立を支えています。

俳優さん達の魅力が満載。特に村田役の佐藤浩市さんが最高。

三谷シチュエーションコメディの構造を映画にもってきた、一つの完成形ではないかと思います。

清須会議

 

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【あらすじ】
本能寺の変で命を落とした織田信長。信長の嫡男・信忠も討たれてしまった。
そこで織田家の後継者を決めるべく、家臣4人が清須城に集まって会議を開いた。
信長の三男・信孝を推す柴田勝家と、信長の次男・信雄を推す羽柴秀吉陣営による会議での戦いの決着はいかに。

三谷幸喜監督作品6作目。

根回し、心理戦で会議の流れが変わっていくのが面白いです。

戦国時代を題材にしながらも合戦ではなく会議でもこれだけドラマチックに描けるんだと興味深かったです。

コメディ色はあまりなく、かといって重厚でもないけれど、見応えありました。

ラヂオの時間

 

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【あらすじ】
素人の主婦が応募した脚本が生放送のラジオドラマになることに。
しかし生放送が迫る現場では、主演女優が急遽脚本内容を変えたいと言い出して・・・

三谷幸喜監督初作品。

もとは、1993年に上演された、三谷さん主宰の劇団東京サンシャインボーイズの演劇作品。

次から次へとトラブルが発生するけれどもショー・マスト・ゴーオン。

三谷さんの舞台的なストーリーをそのまま映像にした感じです。

三谷映画はここからはじまったんだと思うと、続く作品での映画としての変化がよくわかるように思えます。

また、唐沢寿明さん、鈴木京香さん、(カメオ出演的ですが)渡辺謙さんなどが出演。

 

その他の三谷幸喜監督作品

みんなのいえ スタンダード・エディション [DVD]

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THE 有頂天ホテル スペシャル・エディション [DVD]

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ステキな金縛り スタンダード・エディション [DVD]

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シャーロック・ホームズ 「ボヘミアの醜聞」 三谷版人形劇とグラナダTV版の比較

三谷幸喜版の人形劇「シャーロック・ホームズ」については、以前三谷幸喜×学園ミステリー『シャーロック・ホームズ』 3話を見て のエントリで触れた際に、原作を知っていたらもっと楽しめるのでは・・・と書きました。

そこで、(原作そのものじゃないけれど)英国グラナダTVが製作し、日本でもNHKで放送された『シャーロック・ホームズの冒険』第一話、「ボヘミアの醜聞」を見てみました。

 

シャーロック・ホームズの冒険[完全版] DVD-SET1

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 すると、三谷版人形劇はうまいこと学園ものに置き換えていることがわかりました。

  • ボヘミア国王→校長先生
  • 歌手アイリーン・アドラーは、保健室の先生
  • アイリーンの恋人ノートンは、美術の先生

という登場人物の設定もなるほどと思います。

また、ボヘミア国王の依頼でボヘミア国王とアイリーンが一緒に撮った写真をアイリーンから取り戻す、というストーリーはそのまま。

ホームズが写真のありかを「アイリーン本人に教えてもらう」ともくろみ、ワトソンに芝居の火事騒ぎを起こさせて、でもそれがアイリーンに芝居だと見抜かれ、アイリーンに一本取られるところも同じ。

ホームズにとってアイリーンが尊敬をこめて「あの人」と呼ぶただ一人の女性である、という点も。

ですが、特に手が込んでるなと思ったのは、グラナダTV版でアイリーンと恋人ノートンがひそかに結婚式を挙げる場面。

グラナダTV版では、ひそかに教会に駆け付けた二人は結婚の保証人を同行しておらず、そのために神父より結婚が成立しないといわれて焦った二人だが、変装して二人の後を追っていたホームズに彼と気づかずに結婚の保証人になってもらうことで結婚が成立したエピソードがありました。

三谷版人形劇では、アイリーンとノートンが保健室で「校長先生の似顔絵対決」をしていて、アイリーンの動向を探るため仮病で保健室で寝ていたホームズが、どちらの似顔絵が似ているかを判定する羽目に。

どちらも、アイリーンとノートンの二人だけで完結せず、ホームズがいないと成立しなかった出来事になっています。

そんな細部まで気を配っているとしたら、これからの三谷版人形劇を見るにあたっては、ぜひ原作の予習をしたいと思った次第です。

 

 

三谷幸喜×学園ミステリー『シャーロック・ホームズ』 3話を見て

三谷幸喜×学園ミステリー『シャーロック・ホームズ』とは・・・

三谷幸喜が自ら愛してやまないイギリスの古典、『シャーロック・ホームズ』を、痛快ミステリー学園ドラマとして斬新に脚本化。物語を通して、少年ホームズとワトソンの友情と成長の軌跡を描きます。

(NHKホームページ http://www.nhk.or.jp/sh15/ より)

三夜連続放送を見ました。
『最初の冒険・前編 ~「緋色の研究」より~』
『最初の冒険・後編 ~「緋色の研究」より~』
『困った校長先生の冒険 ~「ボヘミヤの醜聞」より~』

三谷さんの前回の人形劇「新・三銃士」や文楽「其礼成心中」を見たときも思いましたが、人形なのに、なんでこんなに表情豊かなんだろうと感心します。
人形であることを忘れてしまうほど。

新・三銃士と人形のデザインさんが同じなので人形のテイストが似ており、最初は新・三銃士のテーマ曲が頭の中を流れていきました。

・・・が、プロジェクションマッピング風のオープニングが曲と相まってとても格好良く、少年シャーロック・ホームズのいる学園の世界へ。

ナイーブな少年シャーロックを三谷さん曰く「ナイーブでも少年でもない山寺宏一さん」が演じていますが、いやいやどうして、このシャーロックは本当にナイーブで、大人びていて、でも少年らしい可愛らしさもあり魅力的。
吹き戻しをピーピーやっている姿が可愛い。

おそらく三谷さんのことだから、原作ネタをあちこちにちりばめていることと思うのですが、残念ながら私はシャーロック・ホームズの話をほとんど知らないので、純粋にこの人形劇における少年シャーロック・ホームズの物語を楽しんでいます。

でも原作を知っていたら、ここでこのネタが来るか!みたいな楽しみがあったのではと思います。

また、三谷さんがどういう物語を、学園の食中毒事件や校長先生の困った話に置き換えたのかも興味がわくところ。原作を読みたくなりました。

ゲスト声優の方々も、ご本人の印象はなく、役そのものになっていて、すごいと思いました。妻夫木さんはどの役をやってたのか、本編を見ただけではわかりませんでした。。。

次は8月ですが、楽しみです。

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関連して下記エントリも書いてます。

 

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